diL’s diary

素数大富豪やたまに数学についてのあれこれを書きます。

nばいめーかーに挑戦しよう!

この記事は合成数大富豪 Advent Calendar 2025の10日目の記事です。昨日の記事はまだ埋まっていませんが、今後埋まる予定です。*1

nばいめーかーと因子法

この記事ではnばいめーかーという合成数出しについて解説していきます。nばいめーかーとは、手札から、nの素因数分解素数p、そしてnpを見つけ、n×p=npという合成数出しをすることで、特に手札を全て使うものに言うことが多いです。n=2の場合は、にばいめーかーと呼ばれ、これについてはこちらの記事でやり方をより詳しく解説しており、この内容を前提にこの記事は書かれています。この記事では、n=2のほか、n=3,Jの場合を中心に解説していきます。

2・3・Jばいめーかーの例から

まずは例題をいくつかみてみましょう。

①(にばい)

手札:222555689QQ

答え:2×256Q9=5Q258

②(にばい)

手札:2244556779J

答え:2×56477=J2954

③(3ばい)

手札:123467889KK

答え:3×1627K=488K9

④(Jばい)

手札:123348899TJ

答え:J×82813=9T943

これを見ると、とても初めの11枚から合成数出しの形を作ることは難しく思えます。そこで、にばいめーかーでは、答えの(p,2p)の組を、次のような2倍(基本)因子に分割して考えることがことが良い方法なのでした。

(256Q9,5Q258)=(2,5)+(56,Q)+(Q,25)+(9,8)

(56477,J2954)=(5,J)+(6,2)+(4,9)+(7,5)+(7,4)

同様に、n倍(基本)因子というものを考えることで、残りも次のように分解できます。

(1627K,488K9)=(1,4)+(6,8)+(2,8)+(7K,K9)

(82813,9T943)=(φ,9)+(82,T)+(8,9)+(1,4)+(3,3)

このように、左辺(大きなn倍因子)を考えるかわりに、右辺(小さなn倍因子の組み合わせ)を作ることは、nばいめーかーの基本的なアプローチとなります。

因子法の限界

ところが、3倍因子、J倍因子と見ていくとわかるように、nが大きくなるにつれて繰り上がりの種類が多くなり、考えるべき場合の数が増えるため、因子に分けるのが難しくなっていきます。そのため、nが2より大きい時、nばいめーかーは、因子法のみでは今のところ現実的でないとされています。

全探索可能性・効率性、いくつかの工夫

nばいめーかーの解法は、全ての場合を全探索可能であり、かつ人力である程度の時間内にできることが重要です。因子法では後者を満たすのが難しいということがわかりました。

そこで、nばいめーかーの実現のために、因子法をベースとしつつ、いくつかの工夫が考えられています。それを今から見ていきましょう。ここに挙げられていない、または見つかっていない工夫も多くあると思われるため*2、それらについては、今後の研究が待たれます。

絵札・桁数への着目

n=2,3,Jかつ手札が11枚の場合を考えます。絵札が、11枚からnをのぞいた10枚のうちm枚ある時、pとnpの桁数の合計は10+mとなります。pとnpの桁数の差は0,1なので、*3mを見ることでp,npの桁数がわかります。n倍因子の枚数*4に着目すると、絵札の使い方が限られるので、考えるべき場合を減らすことができます。

閉因子法

これは主に、にばいめーかーで有効な工夫で、こちらの記事で解説した内容です。n倍基本因子のみを考えるのではなく、因子の並び替えが容易なように、いくつかの基本因子を組み合わせて、繰り上がりを左右で等しくしたn倍閉因子を作る方法でした。しかし、にばいめーかーでは2つ以下の基本因子から閉因子を作ることができますが、3ばいめーかーでは3つ、一般にnばいめーかーでは最大n個の基本因子を組み合わせる必要があり、実用的ではありません。

一桁目から考える

手札をいくつかの因子に分け、並び替えるのがにばい、3ばいめーかーの基本的な方法ですが、適当に分けてしまうと、繰り上がりが噛み合わないことがままあります。Jばいにもなると、ほとんど不可能と言って良いでしょう。そこで、一桁目に配置するn倍因子を始めに作り、続く桁のn倍因子を作ることを繰り返す、という方法があります。この方法では、繰り上がりが毎回確定するため、考えやすいです。

手札の偏り

ある数を使う因子は、nばいめーかーごとに限られています。そのため、ある数が顕著に多く*5手札にある時、その使い方が因子の作り方に制限を与えることがあります。このような制限から考えるのも良い方法です。

nごとの特徴

例えばn=3では、3,pともに奇数であるため、一桁目の因子は必ず奇数2つの組になります。他にもn=11では、11の倍数には偶数桁の数の和と奇数桁の数の和の差が11の倍数になるという性質があるため、一桁目から因子を組んでいくと最上位桁が確定する、などということもあります。このような、nごとの特徴を掴んでいくと、nばいめーかーが少しやりやすくなります。

応用とmod 3

最後に、少しの応用でn=5,30,110の場合にもnばいめーかーが可能となることを見ていきます。

n=5

5×p=5pの形を作ることが目標ですが、pは奇素数として良いため、p=2m+1とおけます。すると、5×(2m+1)=10m+5となりますが、右辺はmという数の末尾に5を付け加えたものです。よって、手札から5を2枚除いて、残りで(m,2m+1)という2倍因子を作ることで5ばいめーかーができることがわかります。*6

n=30

2×3×5×p=30pの形を作ることが目標ですが、ジョーカーがないものとすると、右辺の下2桁はT(10)であるため、p=10m+7とおけることがわかります。*7すると右辺は、300m+210=100(3m+2)+10となり、3m+2という数の末尾にTを付け加えたものになります。よって、手札から2,3,5,7,Tを除き、残りで(m,3m+2)という3倍因子を作ることで30ばいめーかーができることがわかります。*8

n=110

2×5×J×p=110pの形を作ることが目標です。右辺の下2桁がやはりTであることから、p=10m+1とおけ、110p=1100m+110=100(11m+1)+10となります。よって、手札から1,2,5,T,Jを除き、残りでJ倍因子(m,11m+1)を作れば良いです。

同様にして、任意の奇数kに対し、kばいめーかーができるとき、10kばいめーかーができることがわかります。*9

mod3

nばいめーかーができるかどうかが、手札のmod3*10を見ることでわかることがあります。*11例えばn=2,5,Jでは、手札のmod3は2です。またジョーカーがある時、ジョーカーが取る数の候補を絞るのにも役立ちます。

おわりに

具体例など今後追加していきたいと思ってます。n=2,3,5,7,J,Kの場合について、こちらのサイトで練習できます。

みなさんも合成数大富豪*12でぜひnばいめーかーにチャレンジしてみましょう!特に、にばいめーかーは現実的でおすすめです。そして、新しい解法や工夫を探していきましょう!

明日の記事はまだ埋まっていませんが、やはり今後埋まるでしょう、と書いていたところ、3TKさんが「オンラインでの一人回し練習」について書かれるようです。楽しみですね〜。

 

*1:25日の所に「今年も全部埋まったね」と書いてあるため。

*2:特にn=2,3,J以外のnに対しては、ほとんど考察されていないと言えます。

*3:n=Jかつ特殊な場合に2となることもありますが一旦無視します。

*4:これも2倍因子の時と同様に定義します。

*5:または少なく

*6:ただし、2m+1が素数とならねばなりません。

*7:7は3のmod10での逆元です!

*8:ただし、10m+7が素数とならねばなりません。

*9:5は偶数!

*10:全てのカードの数を総和を3で割った余りのこと。

*11:mod9でより精密にできますが、ここでは簡単にmod3で考えます。

*12:素数大富豪でも、あるいは詰め合成数大富豪のようなパズルとして